マイクロツーリズムとは、車で30分~1時間程度の近場への旅行のことです。公共交通機関を使わずに自家用車やレンタカーで気軽に出かけることができ、感染拡大のリスクが少ないとされています。
近年は新幹線やLCCの台頭で遠方への国内旅行が主流となり、またインバウンドにも力を入れる傾向にありました。しかしこのコロナ禍で、感染拡大防止と地域経済の活性化を両立できる旅行スタイルとして、マイクロツーリズムが再び注目されつつあります。
ホテル業界の実例
この流れを受け、「ホテルニューオータニ東京」や「湯河原温泉おやど瑞月」をはじめ、地元在住者を対象に特別割引プランを提供するホテルや旅館が、全国各地で見られるようになってきました。
京都市では7月上旬より自治体もマイクロツーリズム促進に乗り出しており、食事付き特別プランを提供する宿泊施設へ最大25万円を支給するほか、京都市民や市内勤務の宿泊客に抽選で京都市内産の工芸品や食品が当たるキャンペーンを実施しています。
割引以外のユニークな取り組みとして、星野リゾートの都市観光ホテル「OMO5東京大塚」では、近郊に住む人も東京の魅力を再発見できる街歩き企画を開始。お酒やグルメなどに詳しい「ご近所ガイドOMOレンジャー」が、知られざる名店や写真映えスポットを案内してくれるという、エキサイティングな体験ができます。
地元の魅力を再発見して活かす
星野リゾート代表・星野佳路氏によると、マイクロツーリズムでは周辺地域からの宿泊客が来ることで、「この食材を使ったらいいのではないか」「こういった伝統品を取り入れられるのではないか」など、地元を知る人ならではの気づきや意見を聞く機会が増え、地元の魅力を再発見できるメリットがあるとのこと。
地域の魅力を見直しさらに高めることで、コロナ禍を乗り切るのみならず、今後の日本の観光自体を強化させることにも繋がると言います。
情報収集手段の変化にも対応を
また、旅行先が遠方から近場へ変化することで、人々の情報収集の手段が変化することが予想されます。これまでは大手旅行ポータルサイトから宿泊施設を探すことが一般的でしたが、旅先が地元になることから、「そこでどのような体験ができるのか」など、より詳しい情報が求められるようになります。そのため、宿泊施設はポータルサイトだけを頼るのでなく、自社サイトやSNSを駆使した、よりきめ細やかな情報発信が求められることになりそうです。
(参照)
「観光都市・京都再起へ歩み」日経新聞7月30日
「復活は『地元に泊まろう』から 地方の魅力を再発見」日経新聞5月31日